言い訳~blanc noir~
「何でそんなふて腐れた顔してるんだよ」


 和樹が笑うと沙織が口先を尖らせた。


「違います!! ふて腐れてるんじゃなくて恥ずかしいんです」


「何が?」


「何から何まで全部ご主人様におんぶに抱っこだし」


「おんぶに抱っこされてればいいんだよ」


「私、ご主人様の子供みたいじゃないですか」


「もう俺の子供になる?」


「嫌です。だって子供になったら近親相姦になっちゃう」


 沙織のその言葉に和樹が吹き出した。


「……でもやっとこれでご主人様と堂々と外歩けるんだなぁって思うと嬉しいな」


 沙織が柔らかく目元を緩ませた。


「あと半年入籍出来ないけど、私、もうご主人様の奥さんって思っててもいいですか?」


「俺は既にそう思ってるけどね。クロは俺と沙織の娘だし」


 そう言うと沙織が嬉しそうにハンドルを握る和樹の頬に口付けた。


「ご主人様?」


「ん?」


「そこ寄りたい」


「え? そこって?」


 沙織が窓の外を指差した。和樹が目を向けるとそこはラブホテルが建ち並んでいる。


「そこってラブホテルの事言ってるの?」


「はい!!」


 満面の笑みを浮かべ、小学生のように元気よく返事をする沙織の姿が笑いを誘った。


「どうしたの?」


「独身になったからかなぁ? むらむらするんです!! いやらしいことしてください!!」


「そんなに明るく元気はつらつに言われても」


「女が誘ってるんですから、文句言わずに連れてってください!!」


 和樹は困ったように笑い、車を引き返した。


「私、ラブホテルって初めてなんです」


「そうなんだ」


「ご主人様は?」


「俺も初めてだよ」


 そう嘘をついたが、沙織からすぐに見破られてしまったらしい。


「初めてのくせにすんなり入っちゃうんですね」


 沙織が頬を膨らませていた。
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