キミに嘘を吐く日
差し出したままの手を心許無く感じたのか、宇野くんは上目遣いで私を見る。


「やっぱり、俺のこと許せない?」


手がダラリと下がって、唇を噛んで俯く宇野くんを見ると罪悪感が湧く。

だけど、でも……。


「宇野くんには、西条さんがいるのに……」

「それは……ごめん、嘘なんだ」

「え?」

「西条 彩波は、俺の彼女だし!」


突如背後から聞こえてきた大きな声に、宇野くんも私も驚いて声のした方を見た。


「川原?」

「川原くん?」


少し離れた場所から、川原くんが近づいてくる

いつからいたんだろう?

話をずっと聞いていたんだろうか?

それに、俺の彼女って?


すぐ側までやってきた川原くんを、宇野くんが拗ねた様子で肘で小突いた。


「仕方ねえだろ。案の定お前1人じゃうまく話もできねーみたいじゃん」

「だからって、盗み聞きとかありえねー」

「彩波から頼まれてたんだよ、宇野はヘタレだから、ちゃんとフォローしてやってって。お前昨日彩波に喝入れられたくせに、ちゃんと決められてねーって。情けなくて笑っちゃうね」


川原くんの散々な言いように、宇野くんは返す言葉もなくしたみたいだ。

でも、一体どういうことなんだろう?

西条さんが、川原くんの彼女ってどういうことなの?

2人の言い合いを前にして、私は1人茫然自失状態だ。

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