キミに嘘を吐く日
「ほら、いろはちゃんが固まってる」


川原くんの言葉に私もハッとした。

宇野くんが不安そうにこちらを見ている。


「てか、いろはちゃんって呼ぶな」


宇野くんがチラリと川原くんに視線を向けて苛立ちを落とす。


「は?今、そこ重要?」

「今だけじゃない。川原がいろはの名前呼ぶたびムカついて仕方なかったんだよ」

「は?仕方なくね?俺の彼女もイロハだし。……てか、お前俺が彩波の名前呼ぶたび不機嫌だった理由って、それかよ」


目の前で再び2人で言い合いを始めてしまって、どうしたらいいか分からず、置いてきぼりの私。


「うるせーよ。西条といろはが別人だって分かってても、腹が立つんだよ。俺は好きな子の名前を呼ぶことはもう二度とないって思ったら……ムカついて仕方なかったんだよ」

「はああああ?なにその理不尽」

「……悪かったとか、少しは思ってる」

「悪かったって思ってる表情かよ、それが?」


あー、なんだかヒートアップしてきたけど、声かけられない。

確か、出発までは15分しか時間がなかったはずなんだけど……。

あ……。

どうしようかと思っていた矢先に、岩陰から飛び出してきた人を見て思わず声を上げそうになった。


「このばかたれどもっっ!」


そう叫んで声の持ち主が目の前の男子2人の頭を平手で打った。


「「……ってえ!!」」


突然の衝撃に男子2人は揃って声を上げた。

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