ホワイトデーの約束
軽く昼食を済ませて、いよいよメインのプラネタリウムへ。

ドームをキョロキョロ見渡しながらシートに座る。その間も握られた手が離されることはない。
今日は朝からずっとだ。それがこんなにも嬉しいなんて。

しばらくすると照明が落ちて、ドーム状のスクリーン一杯に星空が広がる。
いくつも並んだ星座たちが移り変わっていく様子に圧巻されながら、語られる逸話や成り立ちに耳を傾ける。


あ、流れ星

「先輩、見ました?今、流れ星が流れましたよ!」


声を抑えながら隣の先輩を見ると、彼の顔がすぐそこにあってドキリと音を立てる。
てっきり上を向いていると思っていたのに。


「悪い、見てなかった」
「そう、ですか」


そろりと顔を戻そうとしたとき、サッと唇を奪われる。
いきなりのことに絶句してしまった。
そこからは時折感じる視線のおかげで星座の名前なんて一つも入ってこなかった。


「もう!なんでいきなりあんなことしたんですか!」
「夢中になって見入ってる香奈が可愛くて、つい」


つい、じゃない!
誰にも見られてはいないだろうけど、やっぱり恥ずかしい。


「そんなに怒るなよ。約束通り、ちゃんといい店に連れて行ってやるから」
「・・・じぁ、期待してます」
「あぁ、大いにしてくれ」


そんなやり取りは今までの私達には新鮮で、目が合うと二人して声をたてて笑った。
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