ホワイトデーの約束
夕食にはまだ少し早いからと、辺りの店を冷やかしながら、のんびりとレストランに向かった。

空腹を感じ始めた頃、彼の車があるホテルの駐車場へと入っていく。
驚くことにそのホテルは著名な政治家や芸能人も泊まるような、いわゆる一流ホテル。
まさかこの中の高級レストラン、とかじゃないよね。


「先輩、こんな格好で大丈夫でしょうか?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。確かにドレスコードが必要な店もあるが、今から行くのはカジュアルなものだから気にしなくていい」


本当に?
ふかふかの絨毯が敷かれた廊下に不安が拭いきれないまま、彼についていく。
そして彼が足を止めたのは、確かに上品だけど家庭的な雰囲気のあるレストランだった。


「この前のフレンチレストランと同じ系列なんだが、こっちはイタリアンだ。ここのマルゲリータが最高にうまい」


彼の言葉通り、席について運ばれてきた料理はどれも美味しくて、特にマルゲリータはふんだんに使われたモッツアレラチーズと濃厚なトマトソースが最高だった。
最後にティラミスを堪能して、楽しい夕食が終わる。

そしてもうすぐ、今日という日も、終わってしまう。
こんなに先輩と長い時間を過ごしたのは初めてだから、なんだか別れがたい。

もうちょっと、先輩と一緒にいたい、な。
いや、わがままはダメ。
気持ちをグッと抑えると、レストランの前で先輩に頭を下げる。


「今日は、本当にありがとうございました。とっても、楽しかったです」
「もう終わりのつもりか?俺はまだお前を帰す気はないぞ」


え、まだ先輩と居られるの?
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