口づけは秘蜜の味
(婚約者がいる人なの……)

私は理性を総動員してゆっくりと神上さんの胸を押し返す

「離して…ください…」

なぜと言う顔で私を見下ろす瞳が
ユラユラと戸惑いで揺れていて……しばらく、視線を合わせたけれど

「…帰るか…」

先に神上さんが視線を外した

「はい……」

それでもしっかりと手は繋がれたままで……

そのまま無言で車まで戻った




そして送る…と一言言ってからエンジンを掛けた

「あ……あの…神上部長…」


沈黙が車内降りてきて耐えきれずに話しかけたら、極めて冷静な声が帰ってきた

「今はプライベートだ」

「えと、雅哉さん……」

「なんだ?」

車は海辺から街へ戻ってきていた
夜でも明るい街の灯りが高速道路から見えた

「あの…病院で一緒にいた方とは……長いんですか?」

「どうだろうな、忘れた……確か五年位じゃないか?」

そ、そんなに冷たい他人事のような……

「帰ってきそうですか?」

「どうだろうな……アレは頑固だから…」

その言葉に愛情が見えた気がして自分で聞いたのに
落ち込んでしまった

「そうですか……」

聞くんじゃなかった…

「ところで、舞花こそ……あのサヤさんの旦那さんに惚れてるんじゃないか?不毛だぞ?」

「ちが、違います!彼は単なる幼馴染です…」

急に何を言い出すのかと思えば……しかもまたさらりと名前で呼ぶし……


「爽やかなイケメンって感じだったもんな……」

「だから違います……」




< 17 / 49 >

この作品をシェア

pagetop