極上男子っ!?
廊下を全力疾走していたら見事に私は第二校舎から抜け出せずにいた。

「しまった…完全に迷っちゃった…」

なんでこうも第二校舎は迷うのか。

第一校舎と第二校舎の造りは微妙に違っている。

普通科と総合科にあたるようなものでお互いに接点がないわけではないけど、荒れているからか関わることはほとんどない。

同じ学校なのに全く違うところみたい…

どうしよ、本当に通り口わかんない。

きょろきょろ辺りを見ていると肩にいきなり手を置かれた。

「君、ここでなにしてるの?」

「ひぇっ!?」

「なにその声、なんにもしてないじゃん僕」

慌てて振り向くと綺麗な黒髪の男の子が立っていた。

穏やかそうな表情で白いセーターを着ている男の子、正直第二校舎の人とは思えない。

第一校舎の人…?

私はおそるおそる口を開いた。

「あの、私第一校舎に戻りたいんですけど道わかんなくなっちゃって」

そこまでいうと男の子はああ、と声を漏らした。

「君が噂の…」

「え?」

噂?ひょっとして櫂くんの?

1日しか経ってないのにそんなに広まってるの?

男の子の言葉を待っていたけど彼は何も続けずこっちおいで、と私を手招きした。

「こんな子羊みたいな子を1人でほったらかしておくなんてダメだね」

「子羊…?」

「きちんと鎖で繋いでおかないと誰かにとられちゃうかもしれないのに」

そこまでいうと男の子は私のほうをくるりと振り向いた。

そして細い指で廊下を指差す。

「この道をまっすぐ進んだら第一校舎の通路口があるよ」

「!ありがとうございます!」

私はお礼を言って廊下を進み始めた。

ああ、そうだと男の子が私を呼び止める。

「僕と会ったこと、櫂には内緒にしておいて。じゃあまたね、子羊ちゃん」

そういうと私の返事を待たずにどこかへ歩いていってしまった。
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