冷たい君の不器用な仮面
そんな様子を見ると、やはりここはユウやレイの行きつけの場所なんだと改めて思う。





……そんなとこに私を連れて来て良かったのだろうか。





レイは明らかに、入ってくるなオーラ出してるんですけど。




コトンっ




疑問に思いながらも、2人のコーヒーに続いて出されたココアを、私は一口飲んだ。





そのあとはしばらくマスターやユウと雑談をしながら時間を過ごした。




そして気づけば夜の11時30分。





私はハッとして、席から立ち上がる。




家には居たくないけど、あまりにも帰りが遅いと余計に面倒なことになる。





それは経験済みだ。




私は少し焦りながらも、マスターと楽しそうに会話しているユウを見た。





……声、かけちゃ悪いかな。





なんだか随分と盛り上がっている様子。



お互いが自分の意見を語り合い、熱くなっているところを見ると、ここに水をさすのは良くないかと思えた。





私はユウたちに迷惑をかけないよう、こっそり店を抜け出した。





……さっむ!




ドアを静かに開けた瞬間、体に冷たい風が吹き抜ける。




いくら気温が高いと行っても、真夜中になると寒いものだ。





私は腕をさすりながら、家へと向かった。





「おい。」





突然、誰かの声が耳に響く。





低く鋭い、よく通る声。






ーーーレイが私の後ろに立っていた。





「何してんだよ」




レイが私に向かって、口を開く。





「え、家に…帰るんですけど……」




いや、見ればわかるでしょ。






バックを片手に帰り道へと歩き出そうとした状態だ。






わからないって言う方がおかしい。






すると、レイはなぜかチッと舌打ちして私を睨んだ。




……は!?なんで舌打ちされたの今!!




私は純粋に驚いた。





「何でなにも言わずに出ていった。」




レイは問い詰めるような口調で問いかけてきた。





「だってユウ、マスターと盛り上がってたし……」




「だからって夜に女1人で外出んのかよ」





……何でそんな怒ってんの!





私が何をしようと興味がないんだろうと思って居たレイが、こんなに不機嫌になっている意味がわからない。





……なんなんだ、この人は。






相変わらず、よく掴めない人だ。






「……行くぞ」




私が戸惑っているのを見たレイが、また舌打ちをして、ボソッとつぶやく。






行くぞって、送るって意味……?





「いや、いいよ!そんな遠くな……」





「騒ぐなうるせえ」







……っっとなんなんだこの人は!!




送ると言った割には、私を置いてスタスタと歩いて行ってしまうレイをギロリと睨む。





……優しいんだか冷たいんだか。






私はよく分からないレイにはあっとため息をついた。
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