冷たい君の不器用な仮面
「……ま、いっか。ちょうど涼那ちゃんに聞きたいことあったし。」






ユウは私に麦茶を出してくれた。





「聞きたいこと?」





私は首をかしげる。






するとユウはニコッと笑い、私を見つめた。





「いや、あとで聞くことにするよ。
それよりさ……」






ユウはそっと私の目に触れる。





「……これ、どうしたの?」





子供をなだめるような、優しい声で尋ねてくる。






私はハッとしたように、自分の目をさわった。





……少し腫れてる





さっき泣いたから、まぶたが少し腫れていた。






「何も……」





私はごまかすようにユウから目をそらした。







すると、ユウは私をそっと抱きしめて来た。





びっくりしてユウを見つめると、ユウは背中をポンポンと優しく叩く。





「何かあったら、俺たちに言ってね」





ユウは優しく私に語りかけるように、つぶやいた。





その声は私の涙腺を刺激して。







その瞬間、ぶわっと涙が溢れて来た。






するとユウはより私を強く抱きしめる。






温かいぬくもり。






優しい声。






私とレイとユウしかいない、静かな空間。






……大きな傷が、少しずつ癒えていくような気がした。
< 20 / 298 >

この作品をシェア

pagetop