冷たい君の不器用な仮面
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「っはあ!……はぁ…はぁ……」
私は病院の駐車場の入り口に入った瞬間、マスターの手を放して座り込んだ。
「…涼那ちゃん、大丈夫?」
マスターが倒れ込んだ私を心配そうに覗く。
その声にハッとして、私は後ろを振り返る。
でも、男の姿は見えなかった。
……逃げ切れた?
私は安心したのか肩の力が抜けて、倒れそうになってしまった。
「おっと、」
そんな私をマスターがすばやく支えてくれた。
「あ……、っすいません」
そう言って立ち上がろうとするも、なかなか体に力が入らない。
「いいよいいよ、落ち着くまで待ってるからね。」
そんな私に、マスターは優しい笑みを浮かべながら横に座ってくれた。
病院の駐車場で座り込んでいる私たちを、物珍しそうに見ながら通っていく人が目に入る。
は、早く立ち上がらないとマスターまで変な人に見られちゃう…
「マスターは先に…っ、行ってて下さ…」
「さすがにこの状況で涼那ちゃん一人にしたらレイに怒られるからね。待ってるよ」
?なんでレイ……
「それよりもさ、」
マスターは、まだ息を切らしている私の背中を優しくたたきながら、話しだす。
「さっきの男って、前に涼那ちゃんをさらった奴らの仲間だよね?」
急に真剣な目つきに変わったマスター。
私はうなずき、もう一度後ろを振り返った。
「前もあそこで急に白い布を当てられて、連れ去られたんです。」
……もっと追ってくるのかと思った。
マスターっていう予想していなかった人が現れたからかな。
警戒して追ってこなかったのかもしれない。