医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


それから、航くんはまた学校の校庭を見つめていた。

私と天笠先生はその後ろで航くんを見守り、黙って航くんが振り返る時を待っていた。


「手術したら……学校、行けるかな」


こんな小さな身体で、受け止めなくてはいけない現実は重く辛い。

小児病棟にいると、その親御さんたちが口にすることがある。

『代われるものなら、代わってあげたい』

親ならきっと、誰でもそう思うことなのだと思う。

病気と闘うことは、産み育てた親ですら、誰にも代わってあげられない。


「学校に行ったら、何がしたい」


それまで黙っていた天笠先生が航くんに声を掛けて、つられるように横を見上げる。

天笠先生は、フェンスに手を掛け校舎を見つめる航くんの横へと並ぶと、その細い肩に大きな手を置いた。

一瞬だけやってきた天笠先生を見上げた航くんは、また網目の先を見つめる。


「いろいろあるけど……行ければいい」

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