医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
うとうとしていた患児が、処置室に入ってきた天笠先生にパチっと目を開く。
先生がベッドへと近付くと、緊張した面持ちに表情を強張らせた。
天笠先生の仏頂面と、今にも泣き出しそうに表情を歪め、助けを求めるような視線を送ってくる患児。
それを横から見ていた私は、思わず天笠先生の腕を掴んで引っ張っていた。
勢い任せに腕を引かれた天笠先生は、一変して驚いたようにレンズ越しの目を見開く。
でも、やっぱり無表情は変わらずで、私は意を決して口を開いた。
「先生、笑ってください!」
こんなにはっきり言われてもわからないのか、天笠先生はきょとんとしている。
伝わらないのが焦れったくなり、私の中で何かがパチンと弾け飛んだ。
「そんな恐い顔してちゃダメです! こうです! 口角を上げて、ニコッと!」
つま先立ちになって両手を伸ばし、親指で左右の口の端を引き上げる。
強制的に口元を笑わせられた天笠先生は、されるがままで私の顔をじっと見つめていた。