☆君との約束
「莉華」
優しい声が、風に乗って届く。
「陽向、来たのか」
ゆっくりと立ち上がると、控え室から出てきた陽向が俺にハンカチを差し出してきて。
「何、泣いてんの」
呆れたように笑った。
「わりぃ……」
莉華の前から退いて、陽向に場所を譲った。
容姿が瓜二つの、双子の弟に。
「そこにいたの……お帰り」
すると、莉華の手が伸びて。
「……君も、悲しいの?」
莉華の手は、優しく陽向の頭を撫でた。
それに涙をこぼす陽向。
「泣かないで……君はいつも一生懸命なのね……」
莉華の言葉に、陽向は泣きながら笑い、頷く。
片隅でも、残骸でも、覚えててくれたのなら。
「探していたのよ……」
「うん。俺も探していたよ。お帰り、莉華」
微笑みあう二人。
確かに、昔の二人なのに。