副社長と恋のような恋を
 副社長は私にワインを渡すと、寝室のドアを開けた。

 食器棚からワイングラスとワインオープナーを出し、テーブルの上に置く。取り皿やカトラリーを並べていると、黒いニットにジーンズといったラフな格好の副社長が寝室から出てきた。

 こっちに来たから、手伝ってくれるのかと思えば、後ろから抱きしめられた。

「明人さん?」

「俺のことは気にしないで続けて」

「いや、ちょっと動きにくいよ。イスに座って待ってて」

「嫌だ」

 この感じだとなにを言っても無理だと思い、そのままにしておいた。

 食器を並べ終えると、副社長が離れた。そしてテーブルの上にあったワインオープナーでワインを開ける。白ワインをグラスに注いだ。

「食べましょうか」

 イスに座り、私はワイングラスを持った。

「乾杯しましょう」

 副社長もグラスを持つ。そして軽くグラスを当てた。すると、少し高い音が小さく響いた。

「お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう」

 スプーンを持った副社長はラザニアをすくい口に運んだ。

「うん、美味しい。麻衣は料理がうまいよね」

「明人さんも、うまいよ」

「一人暮らし長いからね。それに、気分転換にちょうどいいから」

「わかる。料理してるときって頭が空っぽになっていいよね」
< 160 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop