副社長と恋のような恋を
 顔を赤くする私に不敵な笑みを浮かべた副社長は、意味ありげな視線を送りながらワインを飲んだ。

 その視線を感じながら、私もワインを飲む。喉から食道にアルコールが流れるのを感じた。少し酸味のあるはずの白ワインは美味しいはずなのに、味があまりしなかった。

 食事を終え、食器を洗っていると、副社長がまた後ろから抱きしめてきた。

「あの、洗いにくいんで」

「手で洗わなくても食洗器使えばいいんじゃない」

「ラザニアのお皿は下洗いしないと」

「グラタン皿以外のお皿も洗ってるよね。もしかして焦らしてる?」

 副社長は私の右肩に顎をのせて、耳元で話してくる。

「焦らすって、なにが?」

「今日は、いつもみたいに抱き枕ってわけには、ね?」

 最後の“ね”の部分が妙に色っぽく言われた。それに対して顔を少し離す。副社長は私が少しも動けないように、腕に力を入れた。

「ちゃんと食洗器使うから。明人さんはお風呂に入ってきたら?」

「お風呂か。一緒に入らない?」

「はい?」

 思わず、色気もない声で反応してしまった。

「これ以上からかうと、帰るって言われそうだから、お風呂に入ってくるよ」

 お腹に回っていた腕が離れて、副社長はバスルームへと向かった。
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