副社長と恋のような恋を
 私はほっとして、お皿を食洗器の中に入れる。シンク周りを掃除して、テーブルを拭く。片付けが終わり、ソファに腰を下ろした。

 視線の先には副社長のお兄さんが描いた絵がある。色とりどりの花を眺める。なぜだろう。この絵をどこかで見たことがある気がした。絵画を見るのは好きだけど、現在の活躍している画家に対する知識はほとんどない。どこでみたんだろう。頭の中で見たことのある画集やいったことのある美術館を思い出してみたけれど、どの記憶にもこの絵はなかった。

「麻衣、シャワーどうぞ」

 振り向くと、タオルで髪を拭いている副社長が私を見下ろした。

「あ、もう出てたんですね。シャワー借ります」

 バッグの中らポーチを出して、立ち上がった。副社長の横を通り過ぎようとすると、手首をつかまれた。そして少し引っ張られ、気がつけばキスをしていた。

「早くできてね」

 そう言って副社長は私の頭を撫で、寝室へと消えてきた。

 もう、心臓に悪いよ。やっぱり振り回しているのは副社長のほうだ。ずるい人だな。私をこんなに緊張させたくせに、自分は余裕なんだから。

 バスルームに行き、一応丁寧に体を洗った。バスタブにはお湯が張ってあるけど、つかったら出る勇気がなくなりそうな気がして、シャワーのみにした。ルームウェアを着て、髪を乾かしてから、副社長のいる寝室へ向かう。
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