副社長と恋のような恋を
 映画が終わり、周りの車が誘導員に従って、ゆっくりと動き出す。

「おもしろい映画だったね」

 副社長は手を離した。ずっと触れていたぬくもりがなくなり、手のひらが少し寒かった。手を膝の上に戻し、その小さな違和感を無視するため、自分から話を振った。

「私、ラブコメって映画や小説、漫画問わず好きなジャンルなんですよ」

「敬語。どこが好きなの?」と、副社長から予想通りの返答が来た。

「必ずどの登場人物にも幸せが訪れるから。それに嫌な奴が出てこないんですよ。キャラクターが濃かったり、性格がぶっ飛んでいたりしても、みんな根はいい人。そういう設定が好きなんです」

 そう言うと「麻衣らしいね」と副社長は言った。

 そのときの表情がすごく優しい顔をしていて、一瞬どきっとした。気を紛らわすつもりが逆効果だったかもしれないと思った。

 ドライブシアターを出ると、大通りへと向かう。このまま最寄り駅まで送ってもらえばいいかと思った。

「家まで送るよ」

「いいですよ。近くの駅で降ろしてください」

「家に帰るまでがデートだよ。送り狼になったりしないから、家まで送らせて」

「わかりました」

 その日はアパートの近くにあるコンビニの前まで送ってもらった。帰り際、副社長が車の窓を開けた。
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