副社長と恋のような恋を

　副社長の考えに異議を唱える人はいなかった。利益を考慮し、デザインを最大限に生かす方法。

　微笑みながらスケッチブックを見せている副社長には、勝算が見えているようで、なんとも言えない空気が漂っている。これも一種の神の黒笑（こくしょう）なのだろう。

「これはラフ案なので、村田さんと山岸さんは次の会議までにデザインをブラッシュアップしてきてください。酒井さんはキャッチコピーのベースになるものを考えてきてください。小野さんは過去にデザインしたもの中でサンプルになるウェブサイトがありましたら次回見せてください。森本さんはジューンブライドに合わせたイベントができないか考えてきてください」

　それぞれが必要事項をメモにとり、その会議は終わった。そして、副社長はめずらしく難しい顔をして、会議室を出て行った。

　村田先輩と会議室を出て、そのまま一緒にお昼を食べることになった。

　お昼休みより少し早い時間ため、社食は空いていた。

「ああ、お腹すいた。今日の会議はカロリー消費した。栄養取らないと、午後の仕事なんてできないよ」

　村田先輩はかつ丼とサラダ、私は中華丼の食券を買った。トレーに食事を載せて、窓側の席に座る。

「さあ、食べよう。いただきます」