副社長と恋のような恋を
 嬉しそうに村田先輩はかつ丼を食べ始めた。私もいただきますと言って、中華丼をレンゲですくった。

「副社長さ、オープンハート嫌なのかな? デザインの方向性が決まった割には、すっきりしない顔をしてたよね」

「そうですね。嫌ではないと思います。もし、オープンハートがデザインとして問題があるなら、その場で言ったと思います。それに自分で改善案を出したくらいですから、デザインに関しては問題ないんじゃないでしょうか」

「そうだよね。副社長って、決断が早いもんね」

「はい」

 会議が終わった後、あそこまで難しい顔をして会議室を出て行ったのは初めてだった。だから村田先輩がそう思うのも無理もないと思う。

「副社長って絵がうまくてちょっとびっくりした。絵がドヘタだったら親近感も沸くのに。顔がよくて、仕事もできて、絵もうまいって、ずるいよね。年末の忘年会はカラオケにしよう。そして副社長が音痴なことを願う」

「なんですか、それ。私はそれよりも先輩と山岸さんとの白熱バトルのほうがびっくりしましたよ。山岸さんって、大人しいイメージだったので」

「山岸は基本、大人しいよ。でも、言うことはちゃんと言うタイプ。デザインにも妥協がない。そしていいデザインを考えるんだよね」
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