絶対に守るから。
七章・夢のまま

目覚ましでもあったなら

ヘゥインは8年前、ミオラスとリオディナを助けた日から目を覚ましていない。ゾーラ医師がヘゥインを覚まさせようと治療に当たったが、5年前の春に過労で亡くなった。せめて最後はと国王の配慮により、ヘゥインは自分の家で眠り続けている。俺も元国王が気を利かせてくれたおかげでヘゥインの息が引き取るのを見届けるまでは城に戻らなくても良しとされていた。けれど、俺たちの中で誰が一番辛いのかと考える事は出来なかった。
皆、一人一人。それぞれが彼女と一緒にいた時間が長すぎた。エレナードは生まれた頃から見守り続け、カーレイジは自分の母が亡くなってから毎日一緒に笑い合ってきた。
ゾーラ医師もやる事はやったんだ。可能性のある治療法がなくなるまで生き続けた。でも、最後の1つを試す前に亡くなった。
治療法は俺たちも知ってはいるんだ。亡くなる前にゾーラ医師が教えてくれたから。けれど、俺たちは誰一人行う気になれなかった。
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