絶対に守るから。
足場の悪い中、エレナードに支えられながら街へと降りるヘゥインの足取りはかつての友人に会うとは思えないくらい重いものだった。強張った表情が伝えてくるのはどんな顔をして会えば良いのかと悩んでいるという事実。
俺と離れてヘゥインが一人になってから、エレナード以外の生き物はヘゥインとの思い出など憶えていない。自分を忘れてしまったのに墓参りに行き、死後の世界で気味悪がられていないかと不安なのだろう。
街に着き、屋敷に続く山道までは車イスで移動をするしかないヘゥインだけれど、本当に連れていって大丈夫なのだろうか。ゾーラさんの墓の前でさえ半日も動かなかったのに、兵士たちの墓の前でどれほどの時間、動かずに泣いてしまうかと心配だったんだ。自分が未熟だったばかりに亡くなってしまった城の二人、忘れてしまったがゆえに戦死してしまった吸血鬼と人間の子供。丸1日動かなくてもおかしくはない。
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