絶対に守るから。
俺が彼女と出会ったのは母親が亡くなってすぐ。兵士なのかごろつきなのか分からない男たちが家の中に入ってきて、赤子を探せと騒いでいた。母親が亡くなった衝撃で思考回路が止まっていたけれど、生まれたばかりの弟を探している事だけは気付く事が出来た。だから、弟まで離れていってほしくないと弟を連れて家を飛び出したんだ。
男たちに追いかけられながら、泣き叫ぶ弟を抱き抱えながら。俺はただ宛もなく走っていた。でも、幼い俺の足は疲れ、もつれ、つまずき。それでも転ばないようにと前を向いた。
母といた家が見えなくなった頃、彼女は俺の目の前に現れると魔力を使って彼女の家に移動させてくれた。助かったんだと体から力が抜けたさ。

「弟の名前は?」

俺が落ち着くと、彼女は着ていたマントを脱ぎなから抱えていた弟の名前を訊いてきた。たぶん、彼女は弟が生まれる前から知っていたんだと思う。弟を狙ってあの男たちが来る事を。
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