絶対に守るから。
他の人の笑顔であれば見ると安心して肩を撫で下ろせた。なのに、彼女の笑顔は俺の心を掻き乱す。胸がときめいて鼓動が速くなると共に、笑顔の奥に何か良からぬ事を考えているのではないかと心の中を探りたくなってしまう。

「私、ここにいる時間が好きなんだ。良い所だと思わない?」

「えぇ。良い所だと思います」

俺は姫がいるから良いと思っている。じゃあ姫は?俺がいるからと思ってくれているのか?
いや、あり得ないだろ。城に来る前にどんな生活を送っていたのか分からないけれど、持っていた衣服はだいぶ貴族や王族に似た物だった。きっと俺のような貧乏な生活を送った事はないだろう。あまり変わらない生活をおくっていたなら、貧乏な俺との時間を大切にする必要なんてない。俺みたいな貧乏人との時間を大切にするはずがない。ただの専属兵士である俺となんて。
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