きらり、きらり、

注文を終えてしまえば料理がくるまではまともに向き合わなければならない。
目を合わせることもできず、もじもじと何度もお手ふきで爪の境まで丹念に清めた。
ああ、もう拭くところもない。

「小川さんは、普段お酒は飲むんですか?」

「飲み会は楽しくて好きだけど、お酒がものすごく好きというわけじゃないですね。晩酌もしないし」

「すごく飲めそうなのに」

「一口でも飲んだら顔が真っ赤になりますよ。こんな仕事だから、深酒はしないようにしてます」

「明日も仕事ですか?」

「もちろん。今日配達が休みだった分もあるから、いつもより多いですね」

そんな会話のタイミングで、桂花陳酒が届く。

「そんなの飲んだら一発で身体まで赤くなります」

「……無神経にすみません」

「いや、俺はおいしそうに飲むミナツさんを見て楽しみますから」

「それはそれで飲みづらいです」

キンモクセイを白ワインに漬け込んだという桂花陳酒は、ほんのりと琥珀色で香りのいいお酒だけど、結構強い。
舐めるように口に含んで鼻に抜ける香りととろりとした甘みを堪能してから、ゆっくりと飲み込む。
喉を焼くようなアルコールが心地いい。
これ全部飲ませたら、小川さんをお持ち帰りできるかな?
男の人は重いだろうけど、根性で持ち帰ってやるのに。

「おいしいですか?」

小川さんの声で妄想から引き戻された。

「おいしいですけど……本当に見るんですね」

「あはは! すみません。つい」

視線から逃れるように、ふいっと横を向いてグラスを傾ける。
不埒な発想は、大きめに飲んだ一口とともにお腹の底に沈めたのに、別のものが熱く燃える。
氷の冷たさだけを求めてひたすらグラスに口をつけ、このままだとほとんど一気飲みしてしまうと焦り出す頃、救いの手がようやくやってきた。

「お待たせいたしました~!」
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