きらり、きらり、
本当に同じ店のラーメン? と疑問を感じるほどに、小川さんと私のラーメンは対照的だった。
さらさらと透き通ったスープにほっそりとやさしげな麺の醤油ラーメン。
具材と麻婆豆腐、何よりどろりと赤黒いスープのおかげで麺なんて見えない麻婆担々麺。
「迫力が……」
スープに合わせたのか、醤油ラーメンの器は白くて薄く、麻婆担々麺の器は黒くて厚くて重みがある。
ラーメンならさらっと食べられるという事前の見通しを、捻り潰すかのような重々しさだった。
「無理しないで食べられるだけ食べてください」
「でも、残すのももったいないし」
「じゃあ、最初から取り分けましょうか」
小川さんが器を頼んでくれたので、私は麻婆担々麺を少量とっていただいた。
「あ、思ったより辛くない」
麻婆担々麺は確かに辛味は強いけれど、特有の甘味もあって、とてもおいしかった。
「足りなかったらもっとどうぞ」
小川さんが黒い器をずりずり勧めてくれたのだけど、
「やっぱり辛ーい!!」
急にやってきた辛味に慌ててお水を口に含む。
最初の一口は平気だったのに、食べ進めるうちにどんどん辛くなってきた。
辛味が口の中に残り続け、食べるごとにどんどんプラスされて加速していくような感覚。
鼻の頭の汗を紙ナプキンで拭き取る私に、小川さんは笑いで肩を揺らしながら、店員さんにお水を頼んでくれる。
「桂花陳酒飲んでも白いままだったのに、顔真っ赤!」
「だって! 本当に辛いんですよ!」
「じゃあ、やっぱりこっちですね」
醤油ラーメンの真っ白な器がすーっと差し出された。
「いいんですか?」
「遠慮なくどうぞ」
箸をつけた様子のない醤油ラーメン。
きっと私が食べるのを待っていてくれたんだなと、嬉しい気持ちがテーブルの上をふわふわ漂う。
よく食べていたはずなのに、記憶よりもやさしく沁みる味がした。