きらり、きらり、
「どうしたんですか?」
通話を切った携帯を小川さんはポケットに突っ込んだ。
「職場の近くのコンビニにいたので、そのまま流れで歩いて来ました」
郵便局が近いことを特別便利だと思ったことはなかったけれど、今初めて感謝していた。
「すみません。呼びつけるつもりはなかったんです」
「呼びつけられたつもりもないですよ」
小川さんは少し辺りを見回してから、空いている車止めに座った。
けれどすぐに「あ」と立ち上がる。
「俺は構わないけど、座ったら服汚れますよね」
私は少し小走りして、もうひとつの車止めにペタッと座った。
「平気です」
小川さんがまた座ったことに安心して、ぶ厚い雲を見上げる。
今夜はどうしても、月を見せるつもりはないらしい。
「これなら食べられますか?」
暗がりだとはっきりしないけれど、小川さんが取り出したパックには、あんことみたらしと、黒ごまあんの串団子が入っているらしく、指差したのはみたらしだという。
「じゃあ、いただきます」
遠慮なくみたらしを受け取る私に続いて、小川さんも串を持ち上げた。
「あ、よかったら、これもどうぞ」
握りしめていたこんにゃくゼリーの袋から、ひとつかみ小川さんに渡す。
「いただきます」
ふたつの車止めの間には隙間があるから、私と小川さんとの距離は1mくらい空いている。
けれど、陰になって街灯も家の灯りも届かない空間にいると距離感は曖昧で、ものすごく近くにも、ずっと遠くにも感じられた。
隣を見つめたい気持ちを抑えて、ひたすらな雲を見上げる。
「おいしい」
むっちりとしたみたらし団子はとろりと甘く、その力強い甘味がいとおしかった。
「うわ、これ黒ごまの方だ」
一緒に口に運んでいた小川さんが驚いた声を上げる。
「黒ごま、嫌いなんですか?」
「そうじゃないけど、あんこだと思って口に入れたからびっくりして」
「暗くてよくわからないですもんね。私だったら気づかなそう」
「じゃあ、あんこの方渡せばよかったな」
「さすがにそれは気づきます」