好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
その時、誰もいないフロアに電話の呼びだし音が鳴り響いた。ハッと我に返って尚樹さんから離れた。尚樹さんが受話器を取る。
わ、私何を……! 今は閉店後とはいえ、勉強会の最中なのに!
『ああ、大丈夫、ちゃんと伝えた』
尚樹さんがそれだけ告げて電話を切った。
ほどなくして峰岸さんが帰ってきた。
「その様子だと無事にできたみたいね、プロポーズ?」
面白そうに峰岸さんが尚樹さんと私を交互に見る。瞠目して狼狽する私をよそに尚樹さんは堂々と私と指を絡める。
「当たり前だろ」
どこか得意気な尚樹さん。
「全くいきなり今日、勉強会にしろとか、フロアにふたりにさせろとか無茶ぶりばっかりね。ほら、一応これ今日の勉強会の資料」
数枚の紙を尚樹さんに渡しながら、峰岸さんの呆れた様子の声がフロアに響く。
「感謝してるよ、峰岸」
落ち着いた声音で尚樹さんが言う。
「どういたしまして、おめでとう藤井さん」
峰岸さんが明るい表情でお祝いを告げてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
恥ずかしくて峰岸さんを直視できない。支店長と河田さんも遅れて戻って来た。
「桔梗くん、藤井さん、おめでとう。これから先、しばらくは忙しくなるだろうけれど頑張って」
優しい笑顔でお祝いを言ってくれる支店長に今さらながらに頰が熱くなる。
え、ちょっと待って、この言い方って……。
「桔梗にプロポーズの話を聞かされた時は驚いたけど本当に良かったよ、おめでとう、藤井さん」
やっぱり、どうして皆が知ってるの……! 恥ずかしくていたたまれない……。
顔が真っ赤になっていくのが嫌というほどわかる。
「何を今さら恥ずかしがっているの? 幸せになりなさいよ」
峰岸さんのいつも通りの笑顔に、胸に熱いものが込み上げて涙が滲む。泣きたくないのに、ここは職場なのに。
「泣かすなよ、峰岸!」
なぜか尚樹さんは峰岸さんを睨む。
違うの、皆さんの優しさと温かさが嬉しいの、と言いたいのに声がでない。峰岸さんはぽん、と俯いた私の頭を無言で撫でてくれた。
「本当に、桔梗くんにはもったいないわね」
呆れたように峰岸さんが尚樹さんを見る。
「うるさい! 莉歩に触るな!」
嚙みつくように峰岸さんに言い返した尚樹さんが、私をがっちり抱え込む。
そんなふたりを支店長と河田さんが微笑んで見ていた。
わ、私何を……! 今は閉店後とはいえ、勉強会の最中なのに!
『ああ、大丈夫、ちゃんと伝えた』
尚樹さんがそれだけ告げて電話を切った。
ほどなくして峰岸さんが帰ってきた。
「その様子だと無事にできたみたいね、プロポーズ?」
面白そうに峰岸さんが尚樹さんと私を交互に見る。瞠目して狼狽する私をよそに尚樹さんは堂々と私と指を絡める。
「当たり前だろ」
どこか得意気な尚樹さん。
「全くいきなり今日、勉強会にしろとか、フロアにふたりにさせろとか無茶ぶりばっかりね。ほら、一応これ今日の勉強会の資料」
数枚の紙を尚樹さんに渡しながら、峰岸さんの呆れた様子の声がフロアに響く。
「感謝してるよ、峰岸」
落ち着いた声音で尚樹さんが言う。
「どういたしまして、おめでとう藤井さん」
峰岸さんが明るい表情でお祝いを告げてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
恥ずかしくて峰岸さんを直視できない。支店長と河田さんも遅れて戻って来た。
「桔梗くん、藤井さん、おめでとう。これから先、しばらくは忙しくなるだろうけれど頑張って」
優しい笑顔でお祝いを言ってくれる支店長に今さらながらに頰が熱くなる。
え、ちょっと待って、この言い方って……。
「桔梗にプロポーズの話を聞かされた時は驚いたけど本当に良かったよ、おめでとう、藤井さん」
やっぱり、どうして皆が知ってるの……! 恥ずかしくていたたまれない……。
顔が真っ赤になっていくのが嫌というほどわかる。
「何を今さら恥ずかしがっているの? 幸せになりなさいよ」
峰岸さんのいつも通りの笑顔に、胸に熱いものが込み上げて涙が滲む。泣きたくないのに、ここは職場なのに。
「泣かすなよ、峰岸!」
なぜか尚樹さんは峰岸さんを睨む。
違うの、皆さんの優しさと温かさが嬉しいの、と言いたいのに声がでない。峰岸さんはぽん、と俯いた私の頭を無言で撫でてくれた。
「本当に、桔梗くんにはもったいないわね」
呆れたように峰岸さんが尚樹さんを見る。
「うるさい! 莉歩に触るな!」
嚙みつくように峰岸さんに言い返した尚樹さんが、私をがっちり抱え込む。
そんなふたりを支店長と河田さんが微笑んで見ていた。