Deal×Love
洸君はずっと話をしてくれた。
気を遣ってくれたのか、私の浴衣のことも、海さんの話題も振ってくれないでいる。

そのお陰で少しラクになった。
花火の音に集中せずに済んだから。

洸君の家には十分程で着いた。
あの日は逃げるように出てきた家に逃げ込むことになるとは思ってもいなかった。


「椿、お茶でも飲むか?」

玄関に入ると洸君が言った。

「ごめん、気を遣わせて……」

「気にするな」

短い廊下を手を引かれて歩き、見覚えのあるリビングであろう部屋に入ると漸く手を離された。

手を離してくれたことにホッとしてしまう卑怯な私。

キッチンへと入った洸君を見送ってリビングを見た私は今回もやっぱり狭いなと感じた。

そして同時に思い出したのは、海さん。
前に彼は此処に住んでいたと聞いたから。
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