Deal×Love
彼を思い出すと目の奥から熱いものがグッと込み上げてくる。

だが、堪えようと思った時にはもう涙が零れていた。

私は洸君に泣いているのを気付かれたくなくて、キッチンに向かって背を向けて座った。

するとまたあの海さんの言葉が頭の中を巡る。

海さんの言葉の通り、皆が幸せになれる恋なんてない。

弥生さんが幸せになった。

私は一人で泣いている。

それが現実。

私には、海さんはどんなに頑張っても手に入らない人だったのだと思い知らされる。

パタパタと目から、膝に乗せている手の甲へと涙が零れ落ちるのを呆然と眺めていたその時、彼に似た柑橘系の香水と温もりに包まれた。

目の前には大きな腕と手。

後ろから洸君に抱き締められているようだ。


「だから言っただろ。海を好きになるなって」


本当にその通りだった。

忠告を聞いておけば良かった。

私が夢見ていた憧れの王子様は海さんじゃ無かった。

こんな辛い恋、したくなかったし、知りたくもなかった……。
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