Deal×Love
「俺に合わせて起きたりしてないよね?」

こっそり私の耳元で言った海さん。

あの柑橘系の香りと、慣れないこの至近距離に一瞬で私は心拍数を上げる。

私は自分の激しくなる鼓動に動揺して一歩後ろに下がりながら、

「そんなことありませんから。気にしすぎですよ」

と必死に笑顔で返す。

「それなら良かった」

私の言葉を聞くと海さんは何事も無いように踵を返してダイニングのテーブルに。


「もう食事が出来ますよ」と笑顔のひさ子さんと、
「手を洗っておいで。一緒に食べよう」と笑顔の海さん。


不思議な空間だ。

これから毎日、この格好良い偽物の旦那様と食事を取るなんて。
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