あけぞらのつき
遠野はミサキを挟んで、アキと向かい合った。
そう言われると、アキには何も言い返せない。
アキは黙ってミサキの黒髪を指で梳いた。
「今日、ミサキを連れて、小野寺の病院へ行ってきた」
古い映写機が、カタカタと音を立てて回り始めた。
アキは、おや?と疑問を顔に浮かべて、ミサキの寝顔を確認した。
目が覚めたような気配はない。
「ミサキは、死体が動いていると言っていた」
「主様が?」
スクリーンには、病院とおぼしき建物の窓が映し出された。
遠野の見た記憶のようだ。
「怖いモノの気配がすると言って、病院に入ることすらできなかったんだ」
次に映し出されたのは、嬉しそうにおにぎりを頬張るミサキの姿だ。
幼い頃から変わらない、愛くるしい笑顔に、アキは顔をほころばせた。
「小野寺の体は空っぽだということくらい、俺にもわかる。だが、体は病院で管理され、生物としては機能している。死体が動いている、とはどういう事だ」
「さあ……」
「守護殿!」
遠野が咎めるように、アキを呼んだ。
「主様には、死体が動いているように見えた、というだけでしょう。主様の記憶を再生できれば手っ取り早いが、あいにくご就寝されている」
起きているときに会いたかったと言外に匂わせ、アキは流し目で睨んだ。
遠野は額に手を当てて、うめき声を発した。
「死体が動いているように見えた、ということは、小野寺のタマシイはすでに死んでいると言う意味か?」
「もしくは」
アキは顎に手を当てて、目を細めた。