大江戸ロミオ&ジュリエット
「……志鶴殿。約束してごらざんか」
切れ長の澄みきった目で、
「決して、一人では抱え込まぬと。辛いことがあらば、必ず『北町』に頼ると」
尚之介が志鶴をまっすぐに射抜く。
「北町の者はみな、おぬしのことを心配しておる。おぬしの御父上からは、見るに見かねる具合ならば『三年』とは云わず、即刻戻ってくるがよい、と言付けられてござる」
尚之介も「三年」という期限を知っていたのだ。
「北町に頼るべきことが起こらば、松波様で奉公しておる『おきく』に云えば、すぐに駆けつけてござる」
奉公人とは話すようになったが、おきくというおなごは知らなかった。
「おきくは北町の『間者』でござるゆえ、志鶴殿とは親しげに見えてはならぬから、わざと口をきかぬように云い含めてござった」
間者がいたのであらば、これまでの松波での「仕打ち」は筒抜けであろう。
「もし、さようなことがあらば、おきくに言付けましてござりまする」
志鶴はしっかりと肯いた。
かように云えば、北町の者たちが案じることがないと思うたからだ。