大江戸ロミオ&ジュリエット

「……おい、おめぇさんとこの番所は、御役目の最中に、いつも酒盛りしてんじゃねぇだろな」

多聞は部下の同心を、じろり、と睨んだ。
部下といえども、多聞よりはるかに歳上だ。

だが、町方与力の嗣子(しし)は元服を終えた十四、五の頃から「見習い与力」として同心を使っていた。

「ま…松波様っ、め…滅相もござらぬっ」

同心は(あわ)てふためいた。

「おいっ、おめぇらっ。
松波様の前で、なんてこと云いやがんでぃ」

同心は岡っ引きと下っ引きの両方の頭を(はた)いた。

そのとき、番所の入り口の油障子が、がらり、と開いた。歳の頃、十五、六のおなごが血相を変えて、いきなり飛び込んできた。


松波の家で奉公している、おせいだった。

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