大江戸ロミオ&ジュリエット

多聞が頭を上げた。やや遅れて、志鶴も頭を上げる。

そのとき、南町奉行所側から、まるで歌舞伎の大向こうのごとき声がかかった。


「……『北町小町(きたまちこまち)』でござるっ」


大広間中の視線が、一気に志鶴に集まった。

南町奉行所のだれもが目をいっぱいに見開いていた。

たとえ、糸のような目の持ち主であっても、生まれて初めて「黒目」と「白目」の境がはっきりと認識できた。

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