大江戸ロミオ&ジュリエット

志鶴は、幼き頃より見目麗しいおなごだった。

町家を歩けば、その身なりや中間(ちゅうげん)(武家に仕える下男)を供に連れていることから武家のおなごとわかっているにもかかわらず、浮世絵の手本になってほしいなどと再々声をかけられた。

実際、志鶴は鈴木春信の浮世絵から飛び出てきたかのごとく、可憐で愛らしい風情を漂わせていた。(ちまた)で飛ぶように売れている「清水の舞台より飛ぶ美人」などは志鶴そのものに見えた。

年頃になると、その名声は武家屋敷を通り抜けて町家まで鳴り響き、いつしか「北町奉行所小町」と呼ばれるようになり、長いので「北町小町」となった。

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