大江戸ロミオ&ジュリエット

志鶴が静かに肯いた。

「……父の顔を知らずに育つこの子には、苦労をかけるとは思いまするが」

その手は(おの)ずから子の宿る腹を撫でていた。
だが、まだ三月(みつき)を過ぎたばかりのその腹は、いささかも膨れていなかった。

尚之介は、志鶴が愛しげに撫でる腹をじっと見つめた。まったく驚いた様子が見えぬのは、既に帯刀から聞いていたのであろう。

尚之介が口を開いた。


「……ならば」

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