大江戸ロミオ&ジュリエット
「松波様、御無礼仕った。
北町奉行所 隠密同心、島村 尚之介にてござる」
尚之介はかように名乗りを上げて、平伏した。
細い髷は高く結った本多髷ではあるが、左右の鬢も後ろの髱もふわっと膨らませた町家の髪型である。身に纏う消炭鼠色の玉縞の着流しも、鯔背な町家の男衆にしか見えぬ。
されども、まったく隙のない眼光鋭き切れ長の目は、とても一介の町家の者のそれではなかった。
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