大江戸ロミオ&ジュリエット

「おめぇは、与力だったら(めかけ)の一人や二人くれぇ(ゆる)されるっとでも思っていやがるが、所詮、町方役人だ……そないに得手勝手できるほど(えら)かぁねえのよ」

多聞は口の端を歪めて苦く笑い、酒の注がれた盃をぐっと上げた。

「奥方様と(おんな)じことをお云いでなんし」

梅ノ香は、くすっ、と笑った。


「わっちは『北町小町』の奥方様から、
『そもそも、与力の御役目は代々続くものではない。虎視眈々とその御役目を狙う者からいつ足元を掬われてもおかしゅうはない。
現に町家で噂になっていて、もし御奉行様の御耳に入れば、御役目に障りが出るかもしれぬことがわからぬのか』
と、こっぴどく叱られなんした」

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