大江戸ロミオ&ジュリエット
「だ…旦那さま、なにゆえ此処にっ」
志鶴は飛び上がるほど驚いた。
「おい、落ち着け。腹の子に障るじゃねぇか」
多聞がいけしゃあしゃあと云う。
腰から抜いた大小の刀を脇に置き、志鶴の傍らにどかっと腰を下ろした。
志鶴は父の佐久間 彦左衛門が話したのだ、と察した。おそらく、そのことを聞いて居ても立ってもおられずやってきたのであろう。
無理もない、松波の家にとっては「跡取り」になる子やもしれぬからだ。
「……本日、我が父より離縁のお話があったはずにてござりまする」
志鶴は固い声で告げた。