イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「何度も申し上げますが、私は見合いなどしません。先方にはお断りしてください」

「智明!」

 苛立ちも露わに幽玄さまが声を上げる。


「おまえは本当に家元としての自覚があるのか」

「ありますよ、もちろん。だからこそ、見合いはしないと申し上げているのです」

「……どういう意味だ?」

「愛のない結婚がどういう結果を生むか、おじいさまが一番おわかりでしょう。それを強いられたお父さまは香月流に嫌気が差し出奔、お母さまも私を置いて離縁。結果、幹部連中はおじいさまの後釜を狙って揉め事を起こし、本部のごたごたに愛想を尽かした大勢の門弟たちが香月流を去った」


 香月流にそんなことが!? 驚きの事実に私は立ち去ることすらできずに息を呑む。


「おまえ私を責めているのか」

「いえ、ただ私は同じ轍は踏まないと申し上げているのです。私はおじいさまの言いなりになどなりません」

「なんだと?」

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