イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「私は自分で選んだ人と香月流を守っていきたい。おじいさまの助けはいりません。失礼します」

「智明、待ちなさい!」

 幽玄さまが止めるのも構わず、ドアが開く。

 まずい! と思った時は遅かった。


「立ち聞き? いい趣味してるね」

「ごめんなさい」

「第一、結月は今日休みでしょ。なんでこんなとこにいるの」

「それは……」


 小さくなる私の手元に視線を這わせると、智明さんはピクリと眉根を寄せた。

 しまった! 花袋を持ったままだった。


「結月、ちょっとお茶でもしようか」

「え、今から? 智明さん、今日はもう予定ないんですか?」

「今日はもう終わり。十階行こう」

 あたふたする私を無理やり引きずって、智明さんはエレベーターホールへと向かった。

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