イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「え?」
「いえ、突然申し訳ありません。私は羽根木智明(はねきともあき)と申します。圭吾さんの、その……友人、です」
少し迷ったようにそう告げると、羽根木さんというその男性は、私に向かって会釈をした。
「……娘の藤沢結月です」
さらさらの黒髪の間からのぞく、切れ長の目。漆黒の瞳に自然と目が吸い寄せられる。
……なんというか、男の人なのにとても綺麗な人だ。
ピンと伸びた背筋に美しい所作、声同様に凛とした佇まいは、育ちの良さを感じさせる。
それに引き換え、私の父は遺跡の発掘調査に飛び回っているせいで年中日に焼けているし、お酒も煙草も存分に嗜む豪快な人だ。
そう、例えるならまるで絵本の中の王子様のようなこの人が本当に、父の友人なの?
「大変な時に突然申し訳ありません。私はこういう者で……」
「あ、ありがとうございます」
差し出された名刺を受け取ろうとさらに羽根木さんに近づくと、彼は私の顔を見てハッとした。