イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 そういえば泣き疲れて眠ってしまって、メイクが取れたままだった。

 自分の顔を想像して羽根木さんを前に羞恥心が込み上げる。

「すみません、こんな顔のまま」

「いえ、僕が突然押しかけたから。あ、こすっちゃダメです」

 慌てて目元をこすろうとした私の手を止め、羽根木さんがポケットからハンカチを取り出した。


「大変な目に合われたんです。動揺して当然です」

 そう言いながら、ハンカチで私の目元を優しく拭ってくれる。

 その仕草も気遣いも、まるで本物の王子様みたいだ。


「不安を押し隠して、取り繕う必要なんてありませんよ。そうでなくては、あなたの方が潰れてしまう」


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