イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「ありがとう、ございます……」

 羽根木さんの言葉はまるで、私の気持ちを見透かしているようだった。

 優しい言葉に、また涙がこぼれそうになる。


「よし、これでもう大丈夫」

 私と同じ目線になるよう背をかがめ、彼は目を細めた。品の良い、美しい笑みを目の前に
してふいに胸が高鳴る。

「あのっ、ありがとうございます。……あっ!」

 涙でマスカラがにじんでいたらしい。彼のハンカチが黒く汚れているのが目に入った。


「ハンカチ汚してしまってごめんなさい。クリーニングしてお返しします」

 ハンカチを受け取ろうと両手を差し出すと、やんわりとその手を阻まれた。

「こんなの大したことじゃありません」

「でも……」

 なおも食い下がろうとする私に、羽根木さんは左右に首を振る。


「これくらい、僕が圭吾さんからしてもらったことに比べたら……」


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