イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 私の夢を応援すると言っていた智明さんが、どうして突然こんなことを言い出したのか。

 訳が分からなくて困惑していると、気持ちを落ち着かせるように智明さんが優しく私の肩を抱く。


「ちょっ、智明さ……」

「んん!」と咳払いの音が聞こえたかと思うと、氷見さんの物言いたげな視線とぶつかった。

「す、すみません」

「いえ」

 しまった! 私たち今、氷見さんそっちのけだった!


「その、よかったらこの後お食事でもと思っていたんですが。ごめんなさい、収録の前に一本取材が入っているのを忘れていました」

「ああ、そうなんですか。それは残念だ」


 智明さん、絶対にそんなこと思ってない。わざとらしく残念がる様子に、見ているこちらの方がヒヤヒヤしてしまう。

 しかし氷見さんもそこはプライドがあるのか、そこは一切態度に出さない。


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