イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「それでは先生、次は連休明けの試写会で。失礼します」

「では」


「藤沢さんも失礼します」

「お、お疲れ様でした!」

 氷見さんはにこやかな笑顔を浮かべ、この場を去って行った。


「はぁ、素敵な人ですねー」

 思わず感嘆のため息が漏れる。

 あたりにはまだほんのり氷見さんの香水の残り香が漂っていて、私は氷見さんが残した余韻から抜け出せない。


「あの、お家元って理想が高いんですか?」

「は? 俺が? なんで」

「や、だって……」


 普通なら、あんなに綺麗で素敵な人に好意を寄せられて、嬉しくないはずがない。

 しかも国民的人気女優だよ。断る理由が見つからない。


 氷見さんがダメなら、智明さんは運命の人に何かもっと特別な要素を求めてるとしか思えない。

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