イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 福岡での試写会は、盛況のうちに幕を閉じた。

 そして今夜は、この後宿泊先のホテルで地元のスポンサーさん主催の打ち上げが行われる予定だ。


「それじゃあ私は先に部屋に戻らせていただきますね」

「え、なんで? 藤沢も一緒に行こうよ」


 試写会の会場から一旦ホテルの部屋へ戻り、打ち上げの会場となっているチャイニーズレストランを案内した時だ。智明さんが突然そう言った。


「で、でも、今夜は出演者の皆さんや映画関係者の方のみのご招待ですよ」

「あー、そうなんだ。じゃあ仕方ないね」

 口ではそう言いながら、どことなく憂鬱そうなのはひょっとして……。


「氷見さん、ですか?」

「あー、うん。まあね」

 やっぱり。


 どれだけ押しても陥落しない智明さんにしびれを切らしたのか、今日の氷見さんはかなり大胆だった。


 舞台挨拶前の打ち合わせでも智明さんの側に座って離れないし、試写会終了後のインタビューでも聞かれもしないのに撮影中の智明さんとの仲良しエピソードを披露する始末。


 壇上で苦笑いする智明さんを見て、私はハラハラし通しだった。

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