イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「頃合いを見てお迎えに上がりましょうか?」

「いや、まあ大丈夫。何時になるかわからないし、危険を感じたらしれっと抜け出すよ。このところずっと忙しかったし、藤沢はゆっくり休んでて」

 なんてことを言いながら、自分の方こそいかにも疲弊しきった笑みを見せる。


「何かあったら連絡くださいね」

「うん、そうするよ。ありがとう」

 軽やかに手を振って、智明さんは打ち上げ会場へと向かった。


「はぁーっ、疲れた!」

 部屋に戻り、お化粧も落とさずベッドに飛び込んだ。

 シャワーを浴びる気も起きず、ベッドに大の字になって目をつむる。


 浮かぶのは昼間、我が物顔で智明さんを独占する氷見さんの姿。

 主演女優である氷見さんの機嫌を損ねたくないから、みんな見て見ぬふり。

 智明さんだけが、氷見さんに気を遣ってくたくたになってるのが見て取れて、とてもつらかった。

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