イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
葛城さんだったら、きっと上手く氷見さんを説得して、智明さんが仕事に専念できるようにしてあげただろう。
見ているだけで何もできなかった自分が不甲斐なくて涙が出そうになる。
智明さんのことだもの、ああ言ってはいたけど、きっと何か起きても、先に休んでいる私に気を遣って連絡なんてしてこないだろう。
「……ダメ、気になる!」
ベッドからガバリと起き上がる。サイドテーブルのデジタル時計はあと少しで午後十時になるところだった。
「いくらなんでも、もうお開きだよね」
このまま一人の部屋で、悶々としているなんて性に合わない。
居ても立っても居られなくなった私は、カードキーを手に部屋を飛び出した。