イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「それでは、今日はこれで失礼します。圭吾さん、また来るからね」
羽根木さんは最後に父の手をぎゅっと握ると、私に頭を下げドアに向かう。
「あの!」
思わず羽根木さんの腕を引いて、引き留めてしまった。結局、父と羽根木さんの関係はよくわからないままだった。
「あなたは……どうしてそこまで父のことを気にかけてくれるんですか?」
羽根木さんは、どう答えるべきか考えあぐねているようだった。
彼は一度空を見つめ、再び私に焦点を合わせると、ゆっくりと口を開いた。
「あなたのお父様には、一生かけても返しきれないほどの恩があるんです」
「……恩?」
「だからお願いです。何かあった時は、必ず僕を頼ってくださいね」
「わかりました……」
私の返事に満足そうな笑みを浮かべると、羽根木さんは静かに病室から出て行った。